誕生日には真白な百合を

サプライズとは恥ずかしくも嬉しいものである。 

 

そろそろお世話になりまくってる先輩の誕生日だから何かしないとな。と。

悩みに悩んで。悩んで。うん。

あれ、明日誕生日?明日?あれー?

時空歪んだ?

 

もう、どうしよう。

とりあえず、名前が入ってれば特別感、自分だけ感出るからいいかな、なんて、ひと昔前の中学生みたいな発想でホームセンターへ。

 

名前入りのもの。名前を入れれるもの。

そこをね、そこでね、デパートとかを選んどけばまだよかったんだよね、きっと。ホームセンターってのが悪かった。

 

名前入れますってプレートに惹かれて行ったら、文鎮。ぶんちん。書道の半紙を抑えるアレ。文鎮。

 

う、うん、あればね!あればなんかに使えるかなって。とりあえずカゴに入れた。

 

うちのホームセンターは田舎だからでっかいの。丸一日楽しめる。もう、遊園地ってぐらい広い。

それぐらい広かったらさ、名前入れてくれるのは文鎮だけってわけないじゃん。

見つけましたよ、

「名前デコ入れます」

 

 

おー、こっれこれ!

すすーんとそのコーナーに、プロレスのスピアーのごとく一直線。

そんな、ローマン・レインズのごとくタックルした先は、印鑑。

そっちかーー。赤コーナー印鑑かーー。

なんならすぐ見つけたしー、

先輩の苗字ー。

 

いや、ね、なくすし。印鑑て。

不意に宅配便とか来た時、あれ?って

こんな一番あなたが輝ける時に、存在意義の証明の時に、どしたー?って

かくれんぼ始めるからね。

 

ここかなー?こっちかなー?ふふふー?

とかやってると、もう暑い中運んで来て次もある業者さんから、

あ、もうサインでいいのでって言われて申し訳なくなるからね。

それで玄関しめるとひょこっと出てくる。

 

もー、こいつめー、恥ずかしがり屋さんなんだからー、ちゃんとおとなしくここにいてね!なんてやってるとまた次の時いなくなってっから。

 

というわけで印鑑もゲット。

 

 

 

拝啓 先輩

 いつもお世話になってます。そんなあなたに日頃のお礼と誕生日のプレゼントととしてこれを送ります。

 

文鎮と印鑑。

 

 

さすがにー。さすがにね、ちゃんとわかってる、間違ってるってわかってる。でもね、もう。うん。明日だし。

 

とりあえず持ち帰って、デコレーションを考えてみた。可愛い箱に入れた。それしかなくて、、、。

 

う、うん。溢れる文鎮の重量感。大御所かなって。もう、周りのわしゃわしゃした紙の中に鉛がドン。なんなら埋もれてる。

 

ひな壇の中に梅沢富美男がいる。

 

少しリボンとかつけて可愛いげを出したの。梅沢富美男ならね、魅惑の流し目!とかできっと美しさを演出できたんだろうね。

文鎮だから。文鎮。

 

 

投げました。

 

とりあえずベットに行ってTwitter見たりしてた。

ニワトリは三歩歩けば忘れるっていうけど、私、ニワトリかもしれない、ニワトリなんじゃないかな。

 

背中がゴリゴリするなーと手を伸ばしたらHUNTER×HUNTER。最新刊34巻。

最高に面白かった34巻。

邪魔だったから、机の上にシュッと。

天空闘技場でウィングが本のページを破って投げるように。

 

私、念使えた?裏ハンター試験合格した?それくらい、見事に文鎮入れてた箱にヒット。そして床に落ちる両者。

 

まてまてまてまて。きみきみきみきみ。

いくらリボンついてるからって、

いくらわしゃわしゃした紙が絡み付いてるからって、君は腐っても文鎮。文鎮。そう。鉛の塊。

 

文を鎮めるって書いて文鎮。

不動の文鎮。 そんな落下なんて君にはあってない!

 

 

文鎮の落下する刹那、ベットを蹴り文鎮に手を伸ばす。

敷金が!

敷金が帰ってこなくなる!!

 

 

筋肉番付でのSHOT-GUN-TOUCHのときの全盛期のケインコスギのように前に飛び、手を伸ばした。

 

親方!空から女の子(鉛の塊)が!!

あれ?女の子、落下速度早くね?

飛行石つけてなくね?

9.8m/ s^2で落ちてね?

 

しかしそれでもパズーはやるしかない。

敷金がー!!!

とか言って拾いました。

 

SHOT-GUN-TOUCH成功ーー!!!!

古舘さんいたら思わず声を出してた。

それくらいギリギリを制した。

 

パズー選手(私)は舞台裏にはけていく。舞台裏つーか、キッチンつーか、

キッチン下の救急道具入れ向かってた。

 

もうね、赤い。左手の薬指が赤い。

もし、今「事前にサイズを測っておきました!」って求婚されても、

指輪、はいらない。

 

 

もう、こんなね危険なものさっさとあげてしまおうって、先輩のね、デスクの上にそっと置いておいたの。

 

なんでだろー。なんで直接渡さなかったのかなー。

まだね、やだー、ふふふーってしてくれたかもしれない。

 

二日後、忘れ物の棚に置かれてた。